あなたは上司の態度や一言に嫌気が差したり、苦手だなと感じたとき、あるいはムカッとしたとき、あなたは本音とは裏腹に、「ハニカミ笑い」や「目を伏せる」ことがありませんか?
実は、部下のこのような仕草は、人間に限らず類人猿(サル・チンパンンジーなど)にも見られるようです。
種は異なれど、どちらも上下関係のある集団生活を営み、つねにコミュニケーションに気を遣っているという証拠とも言えるでしょう。
心理学という学問には、こうした種を越えた生物間の考え方や行動を比較検討し、そこから人間の生き抜く知恵を学ぼうとする比較認知科学という領域があります。
そこでこの記事では、上司と上手に付き合うためのヒントを、この領域の知識を借りて考えていきます。
自分の見せ方を工夫する:自己呈示行動
相手(上司)との良好なコミュニケーション形成を目指す行動の1つに、「自己呈示(じこていじ)」という心理学の言葉があります。
これは、相手の自分に対する印象や評価をコントロールしつつ、自分の意見や態度を上手に伝えようとする意図を伴う行動と言えます。
要するに、あえて自分を装い、相手(上司や先輩)との関係を繕おうとする行動を意味します。
縦の関係がある社会生活を生き抜く上で、私たちにとって非常に重要なテクニックと言い換えても良いかもしれません。
この自己呈示行動は大きく分けて、2次元(4象限)に分類されます。
具体的には以下の図のように分けられると考えられています。
そして、この4象限に分類される自己呈示行動の特徴は、次のようになります。
(1)「戦略的・防衛的」な自己呈示行動
不特定の他者に対して少しずつ時間をかけながら、相手が自分に否定的な印象を抱く可能性があるときに、それを少しでも肯定的な評価に変えようとする試みを意味します。
このような行動の例としては、アルコール依存や薬物依存、寝不足、病気・精神疾患を装うなどの振る舞いが見られます。
(2)「戦略的・主張的」な自己呈示行動
不特定の他者に対して少しずつ時間をかけながら、自分の評価や印象に関わらず、特定の印象を他者に与えることを目的に、自分から積極的にアピールしようとする言動を意味します。
このような行動の例としては、魅力や尊敬、威信や地位をアピールするなどの振る舞いが見られます。
(3)「戦術的・防衛的」な自己呈示行動
特定に対人場面において、一時的に相手が自分に否定的な印象を抱く可能性があるときに、それを少しでも肯定的な評価に変えようとする試みを意味します。
このような行動の例としては、釈明や謝罪、セルフ・ハンディキャッピングなどの振る舞いが見られます。
(4)「戦術的・主張的」な自己呈示行動
特定に対人場面において、一時的にでも特定の印象を相手に与えることを目的に、自分から積極的にアピールしようとする言動を意味します。
このような行動の例としては、取り入りや威嚇、自己宣伝、称賛付与などの振る舞いが見られます。
ズバリ!戦術的な自己呈示行動を使いこなしてみる
さて、上記で取り上げた4つの分類のうち、上司との円滑な関係を築くためにはどのようなテクニックを用いると良いのでしょうか。
様々な研究から明らかになったことは、(3)戦術的・防衛的自己呈示と、(4)戦術的・主張的自己呈示の2つの行動を使いこなせると良いということです!
それでは最後に、実際の「戦術的」な行動例を取り上げてご紹介していきますね。
①「釈明」(防衛的)
釈明は、何か自分が失敗したり、意思疎通がうまく行かなかったときに行われます。しかし実は、釈明には「弁解」と「正当化」の2種類があります。
戦術的な釈明を行うには、正当化を上手に使いましょう。
これは、一部の責任は自分にあることを認め、自分の言動に対する否定的な意味合いを弱めることになります。
②セルフ・ハンディキャッピング(防衛的)
自分の能力が評価されるとき、あえて自分にハンディを課すことで、成功した時に評価が割り増しされる効果があります。
例えば、寝不足であるとか、多数の仕事を同時に抱えているなど、相手に評価を受ける前に自分でハンディを宣言することがあります。
③取り入り(戦術的)
これはそのまま、相手に好意的な評価を引き出すための手段です。
相手に対するお世辞や意見同調、親切な行為などが当てはまります。
大切な点は、取り入りばかりを用いずに、他の行動と使い分けることが重要です。
④示範(戦術的)
これは、ケアワークを意味します。
つまり、滅私的行為や献身的な努力が当てはまると言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、自己呈示行動に焦点を当て、上司とうまく付き合う(コミュニケーションを図る)ためには、それらを適切に使い分ける必要があることをご紹介しました。
上司との関係改善に悩んでいる方は、早速職場で実践し、その効果を実感してみて下さいね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。